カテゴリ:妄想日記( 6 )

先日、荻窪の古本屋で見つけた分厚い本なんですが、面白かったんではしがきだけ全文転載しておきます。
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はしがきにかえて iceday研究の魅力と泥濘

 このたび、天才ブログ作家iceday氏のわが国初の研究書『icedayとは何ぞなもし』を刊行できる運びとなったことは、十余年にわたりiceday研究家を自認してきた編者にとって望外の喜びである。

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 氏の独特の魅力をこの限られた紙数で語り尽くすことはできまい。しかし今日の我々はその魅力的な作品全てを氏のブログ上で(無料で!)読むことができる。
 氏の魅力の荒々しい原型が既に見られると研究者の間での評価も高い処女作品「ウーロン茶」から、氏にとって一つのターニングポイントを迎えた代表作「蹴球的飲会」、ベーコンレタスバーガーにパテが入っていなかった「笑えなくしてみたい。」に至るまでのあらゆる作品が、例えば、現在は礼文島でウニ漁を営むわが旧友、山之内譲治くんにさえも(ウニの殻を剥く手を少し止めてくれさえすれば)(無料で!)読むことができるのである。インターネットなどなかった時代よりiceday研究を続けていた十年前の作業を振り返れば隔世の感がある。なんともはや、いい時代になったものだと、驚嘆を禁じ得ない。

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 icedayブログの魅力の一つは豊富かつ奇怪な人物構成にあると言えよう。博士、猿、助手、マーライオンのデルピエロ海を渡る犬「ねじ」なんか最近出てきた「皆様パタゴニア~」とかいう不快な人、など、多彩な顔ぶれは読む者を飽きさせない。
 特に職能の幅広さとそれに反比例する了見の狭さを持つ女、ダービッツは、氏の生んだキャラクターの中でも群を抜く怪異さである。美容師に始まり、居酒屋店員不動産屋旅行代理店新聞勧誘自動車教習所教官バスガイドブライダルコーディネーター(ここで初めてお客様の性別を知った者多数。)、ゲームソフト屋店員パソコン講師タクシー運転手ブティック店員寿司職人スーパー店員(バックヤード)、警察官と、現在までダービッツの経験した職業は遂に十五を超えた。これは、前述の旧友、山之内譲治君が、七年前に株式会社むささび物産を懲戒解雇されてから現在までの転職回数(十三回。うち正社員四回)に匹敵する。山之内君が七年かけて築き上げたキャリアを数ヶ月で軽々と超えるダービッツ、やはり只者ではないといえよう。

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 iceday研究者の間では、氏の意欲的な創作活動を五つの時代に整理して捉える(Sardine, 2004などによる)ことが定説となってきている。曰く、

1、黎明期=蒟蒻とY君の時代
2、「蹴球的飲会」期
3、「マグロ市の誕生とその発展」期
4、博士期
5、別冊アスキー載っちゃった期

の五時代である。このうち「博士期」の呼称については他にも「ダービッツ期(Salmon, 2002)」「助手期(Whale,Dolphin et al.,1972)」「猿期(Mackerel,1623)」「お客様期(Yamanouchi, 1999)」などの別称があるが本書ではSardine(2004)に従った。

 いずれの時代においても、iceday氏の創作への強い魂はひとときも翳ることはなかったが、中でも特筆すべきは「蹴球的飲会」期以降に生み出された「羅列系」作品群であろう。これにはかるた風のもの(「ジェラートはラムレーズンで決まり。」)、散文詩風のもの(「恐れていたのはトイレットペーパーがきれること。」「あなたが星を探すなら、わたしは電力止めましょう。」など)、ひとことネタを並べて鑑賞するもの(「女と猫は呼ばないときにやってくる」「もう少しで求婚の季節も終わります」)などのいくつかのジャンル分けが可能である。これら作品群が質・量ともに圧倒的な存在感を示したことが、現在のiceday人気につながる原動力になったと言うことができよう。

 また「マグロ市の誕生とその発展」期にブログ名をころころ変えていたという事実にも、ここでは触れておきたい。「つれつれマグロん」「人ツナ”まぐろ”・・・揺れる背びれ」「*なりたいマグロになる*」(現在なら「なりたいマグロ探しの旅」)など他のブログの題名をもじったタイトルが多かった、というかそれが全てだ。氏がこのような度重なる名称改変をした理由について、多くの論文が発表されている(Goldfish, 2002 など)が、現在では、「隣人に同化したくともできないマグロの悲哀を表現していた」というのが定説のようである。

 余談であるが、編者の元には、一九九九年ごろから十数度にわたり、全国のありとあらゆる消印の押された無心の手紙が郵送されてきていた。内容も筆跡も全て同じであったものの、送り主の名だけはなぜか毎回違っており、「山上譲」「山崎謙治」「ジョー内山」など、似通ったものが多かった。編者はその都度、微々たる金額を現金書留で返送してやったものである。
 思えば彼も「隣人に同化したくともできない悲哀」を表現していたのかもしれない。

 ところで山之内君、君はいったい、誰に追われていたんだね?

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 さて、はしがきとして編者に与えられた紙数も間もなく尽きようとしている。

 本書は、現代iceday研究の最前線から、それぞれの分野での最新の研究成果を編纂したものとなっている。より多角的な視野からiceday作品を鑑賞・分析するために、以下の七章(+あとがき)で構成することにした。

第一章 「ポストモダンとしての猿・試論」
第二章 「酩酊とiceday~泥酔者心理学としてのiceday研究」
第三章 「『お客様は女か男か』論争と二人のiceday」
第四章 「マグロ市はどこにあるのか~地誌学的視点から~」
第五章 「右上写真の謎~あれ、ほんとにお前んちの風呂?~」
第六章 「真冬のバフンウニは美味いどー!」
第七章 「iceday~そのアイディアの源泉~」
あとがき 「結婚すると、ふたりで油田を掘ることができる」

 このうち、第一章から第五章までと第七章については編者が担当執筆した。第六章は山之内譲治氏(北海道在住)からの特別寄稿である。いずれの章においても、iceday氏の作品の魅力を真摯に分析した内容となったと自負している。

 読者諸氏におかれては、是非一度、全iceday作品を通読されたい。そのあふれるユーモアと抒情に、時に抱腹絶倒し、時に落涙すること間違いない。その後に本書を再度手にとっていただければ幸甚の極みである。

 最後に私信となるが、山之内君、もう十分君には援助をしてきたはずだ。君の夢はよく分かるが、北九州のニャンニャン喫茶で大失敗した時のことをいま一度思い出してくれ。他のことならともかく、択捉島の油田ビジネスに投資するのはリスクが高すぎる。もう少し冷静になって再考してはくれないだろうか。
 頼むから。
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by AyatoSasaki | 2004-06-08 08:57 | 妄想日記
 今日はこの場を借りて、昨年の6月に施行された「区民の健康を守る条例」を弾劾したい。
 このブログではできるだけ時事問題や政治・経済の話題は避けようと誓っていたのだが、この悪法にはもう我慢できないのだ。

 ニュースにもなったからご存知の方も多いとは思うのだが、いま、僕の住む17区では、塩入りの食べ物を提供・販売することが条例によって禁止されている。食塩そのものは西の大市場の「食塩管理協会本部」で身分証明書を提示すれば購入することができる。でも、驚くほど高い税金がかけられていて、なかなか気軽に買うことはできない。

 17区中のカフェーや食堂で出されるのは、塩味のまったくない食べ物だ。ケバブーも春巻もチキンスープも、17区で食べるとまったく味が違う。塩気のないホットドッグ、食べたことある? ティッシュペーパーを丸めて噛んでるみたいな味しかしない。

 もちろん家で塩味の物を食べることは許されているけれど、母が塩嫌いなのであまり食べられないでいる。仕方ないから、時々、こっそりと台所で塩を舐めるくらいだ。深夜の冷え込んだキッチンの床に座り舐める食塩は実に無機的な味がする。

 17区の状況を良く知らない方も多いと思うのでざっと説明すると、17区はこの国のどんな自治体よりも先進的で過激な施策を次々と導入することで知られている。特に3年前に区長が共和党系の若手、時計田ミミオ氏になってからはさらにその傾向は顕著で、特に区民の健康増進に関してはどんどん大胆なサービスが実施されている。そういう区に住んでいることは僕の誇りでもある。それは今でも変わらない。

 でもやはり今回の条例だけは、少しやりすぎなのではないかと、僕は思っている。

 もちろん条例に断固反対の立場をとり、堂々と塩入りの料理を出してくれるバーもまだいくつかある。そういうお店はどこも塩好きの大人で大繁盛だ。しかし、おそらくそれも時間の問題だと思う。管理協会のかける税金は年々上昇を続け、彼らの経営を確実に圧迫しているからだ。

 もちろん、理屈はよく分かる。塩分摂取が高血圧を引き起こすことは医学的にも明らかであるし、近年は胃がんとの相関関係も指摘されている。確かに健康に良い物ではないのだ。特に大量に摂取してしまう人は寿命も短いことは統計的事実ではある。

 しかし、だ。別に体に悪いものなら他にいくらでもあるではないか。牛肉のコレステロールは? 乗合電車の蒸気噴煙は? 仕事のストレスは? 塩辛い物を食べて早死にするのなんて、個人の自由なんじゃないのか?

 でも、そんな議論をすることさえ犯罪、といったような雰囲気が、今の17区にはある。昨今の健康ブームも手伝って、国中のムードもバッドイメージ一色だ。大半の企業では、すでに室内で塩分を摂ることを自粛させている。会社の屋上で寒風に吹かれて食べる昼食の寂しさとむなしさ。みんなこの雰囲気が耐えられなくて次々と禁塩を心がけるようになるという。

 少量の摂取なら特に健康には問題がないことは科学的にも分かっている。でも、ちょっとでもマスコミが騒ぎ立てると「塩分=全面的に悪!」という世論がすぐさま形成されてしまうのが17区の奇妙なところだ。過激なほうの意見を代弁すれば、塩分を取りすぎる人は区民の負担である医療費を無駄に使わせてる税金泥棒なんだそうだ。ふうん。僕らは税金大目に払ってると思うのだが。

 もっと恐ろしいことに、隣の13区や、王宮のある6区の一部地域でも、同じように食塩を禁止しようという動きがある。嫌塩権という概念がこの国全体に浸透しつつある今、いつ食塩が全面違法化しても不思議ではない。これを個人の自由の侵害と言わずして何と言おうか。

 今、17区では、スポーツクラブに入会する区民が増えているという。健康のため? 違う。たっぷり運動してかいた汗をこっそりと舐めるためだ。この条例のおかげで運動をする区民が確かに増えたというのもなんだか皮肉なことなんだけど。

 今僕は、この場を借りて声を大にして言いたい。

 僕は、街で気軽に塩を食べたいのだ。ただそれだけなのだ。別に塩が嫌いな人に無理やり塩を食べさせようという気もないし、塩が嫌いな人の前では塩入りの食品を食べないだけの分別もある。

 区長および17区民のみなさんに言いたい。もう一度、冷静になって考えてくれ、と。自分の腕をこっそり舐める人生なんて、僕にはもうこれ以上耐えられないのだ。
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by AyatoSasaki | 2004-05-11 05:14 | 妄想日記
 羊のシュレックのことを話したいと思う。

 ある日の夜、いつもよりいくぶん冷えた秋の夜、シュレックは「1人で生きよう」と心に決めた。常に団体行動をとらねばならぬ羊としての宿命に、彼は昔から疑問を抱いていたのだ。羊にしては画期的なことだ。

 もちろん孤独は怖かった。羊なのだ。群れたいという本能がひづめの先までしみついている。それに世間体、というものもあった。群れから離れて行動すること、群れの和を乱すことは、羊社会にあっては絶対的なタブーだ。

 しかし彼は心に決めた。皆と同じ考えを持ち、皆と同じ動きをし、皆と同じ死に方をすることは、彼にはどうしても許しがたいことのように思えた。

 実は、以前にも1度だけ、彼はその考えを実行に移したことがあった。羊飼いの人間と牧用犬の目を盗み、西の海辺の崖まで一匹だけで歩いていったのだ。
 夕陽に染まる海をシュレックは初めて見た。こんな美しいものが世の中にあったのか。シュレックは思わず嘆息を漏らした。めえ。
 強い風がシュレックの羊毛を大きく揺らした。眼下の海は低気圧の影響で激しく波立っていた。そういう風景の一つ一つが、彼には印象的に思えた。
 よし、と彼は思い立った。この素晴らしい風景のことを皆に伝えよう。世界はまだ素晴らしい望みに満ちているのだということを、仲間に伝えようじゃないか。それが僕の使命だ。

 けれどもその夜、群れに戻ったシュレックを待っていたのは、仲間たちからの激しい非難の声だった。

「なぜそんな危ないところに行ったんだ!」
「西の崖には行ってはいけないと、事前に勧告は出しておいたはずだ!」
「我々に迷惑をかけるな!」

 具体的に誰に迷惑をかけたのか、彼にはさっぱり分からなかったが、けれどもなんだか群れじゅうの全ての羊が彼の行為にコメントしていたので、彼はもう何も言いたくなくなった。美しい夕日と、その時彼が確かに感じた未来への望みについても、彼は語るのをやめた。
 
 要するに彼らは退屈なのだ、とシュレックは理解した。仲間どうしで群れて草を食み続けること、これが彼らの考える「世界の平和」なのだろう。しかしそれすら、結局はあの二本足の羊飼いと犬どもによって守られている閉じた世界に過ぎないということもシュレックには分かっていた。まったく、羊って奴は。

 そんなことがあってから、彼は「一人で生きる」ということを真剣に考え始めた。絶望と隣り合わせの仲間たちと同じ社会に属しているなんて、もううんざりだった。
 シュレックはその日からずっと、色々な計画を立て始めた。いつ出発すべきなのか、どこにいけば見つからずに済むだろうか、そして、そこで本当に生き抜くことができるのだろうか。

 ある日の夜、いつもよりいくぶん冷えた秋の夜、シュレックはこっそりと旅に出た。
 目指すは南の岩山だった。あそこまで行けば見張りの羊飼いはまず来ない。見つからない自信があった。そして多分、こちらの草原から見た様子からすれば、一匹の羊が生きていくには十分な草がはえているようだった。

 そのようにして、彼は羊社会から姿を消した。シュレックがその後何に出会い、何を見て、何を思うのか、それは分からない。彼はもう何も語らないと心に決めたのだ。察するに、魅力的で強く激しく、時に苦痛でそれ以上に希望に満ちたかけがえのない日々が彼を待っているのだろう。
 そして残された羊社会は何も変わらない。ある者は死に、すぐにそのある者の代わりとなる者が補充される。危険も恐怖も希望も未来もない毎日。


 六年後にシュレックは見つかってちょっとしたニュースになる。でもこれは別の話だ。

inspired by a true story from BBC News.

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by AyatoSasaki | 2004-04-29 19:18 | 妄想日記
 パスワードに、一つの英単語を使っている。
 メールもブログもプロバイダも、全部おんなじパスワードだ。Lから始まるごく日常的な単語。

 僕がおじいちゃんになったら、死ぬ間際に絶対、自分の家族にこの英単語を漏らしてから死のう、と思っている。迷惑がかからないように。

 でも、あまりにも日常的な単語なので、家族はそれがパスワードだということに気付かないかもしれない。
 「おじいちゃん、最後、訳わからない英語話して死んじゃったわね……ボケちゃってたのね……。」とか長女(45)にしみじみと言われたら、思わず3代くらい呪ってしまいそうなくらい無念だ。

 金田一ハジメみたいな孫がいればいい。
「じっちゃんのダイイングメッセージは……そうか! 謎はすべて解けた!」
 そうだえらいぞハジメ、よくぞわかってくれた、これでワシも安心して成仏できる。

 あ、でも受信箱の昔のメールとかから余計な展開させそうだなコイツ。

「じっちゃんが、自分宛にメールをいっぱい打ってる!」
「なになに、ええと…『父はワニ似』?なんだこりゃ?」
「こ、このメールは一体……。」
 ……そして僕達は祖父からの新しい挑戦を受けることになったのでした……それがまた新たな惨劇の始まりだったのです……

 いや、違う。それはネタのメモを送っているだけだ。そういうのを詮索して勝手に連続殺人引き起こすのはやめてくれ。

 もういいや。パスワードは伝えないで死にますから全部解約しちゃってください。>まだ見ぬ家族の方々。
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by AyatoSasaki | 2004-04-22 11:59 | 妄想日記
 彼女がちょっと出かけているとき、家でぼんやりとテレビを見ながら、僕はちょっとだけ妄想してみる。
 もしも僕らが爬虫類だったら、もうちょっと楽しい人生だったんじゃないかなあ、と。そんな妄想で時間をつぶすのは、僕の数少ない趣味のひとつなのだ。



 まず、年に一回、脱皮をすることになるのだと思う。
 夏の暑い時期かなんかに、体中が猛烈に痒くなり、思わずぼりぼりとかきむしってしまう。すると、二の腕あたりの皮膚が、ある日突然ぼろっと剥けたりする。ぺりぺりぺり、と音を立てながら、腕、肩、胸、背中、下半身まで一気に皮が脱げる。顔はすっぽりと、まるで半透明のお面をはずすように脱皮できた。なんか気持ちいいけど、他人が見たら気持ち悪いんだろうな。

 食べ物は基本的に丸飲み。歯、というか牙みたいな奴しかないから、あんまりうまく咀嚼ができないのだ。下あごは立派に発達していて、まあ大人だったらキャベツ一個くらいなら簡単に飲み込める。

 もちろん、食べ終わった後は食休みだ。何時間も、ぼけーっとしながら、じっと胃酸が食物を溶かし終えるのを待つ。DVD見たり、友達と携帯で長話したりして過ごすことが多いから、別に退屈じゃない。

 それに、爬虫類だから、そんなに毎日ご飯を食べなくちゃいけないってわけでもない。だいたい三日にいっぺんくらいでいい。

 秋口には冬眠の準備をしたい。東京の冬は寒いので、秋に食べるだけ食べて僕らは3月くらいまで家の中で寝て過ごす。お金のある人たちは、暖房をつけっぱなしにして冬眠しないで遊んだり働いたりするけれど、僕みたいな貧乏ライターなんかは光熱費も食費も馬鹿になんないんで数ヶ月寝てしまう。
 もちろん冬眠中に会社を解雇してはならない、という条項が労働基準法の中に明記されているから、僕らは安心して冬眠するのだ。

 ああそうそう、春が来て目が覚めても、まだ急に冷え込む夜がある。飲み屋でちょっと遅くまで飲んじゃったりして、店がしまったらもう絶望的だ。家に帰る途中で寒くて固まってしまうかもしれない。春先のこの時期なんかは、酔っ払って固まっちゃったサラリーマンが道端にごろごろと寝ている。彼らはもう、太陽が自分の体を温めてくれる10時くらいにならないと目を覚ますことはない。昔は今みたいに世知辛い世の中ではなかったらしくて、朝、自分の家の前で転がっている人にお湯をかけて起こしてあげる親切なおばちゃんとかが必ずいたもんだけど、今は他人には無関心な時代。だいたいそういうサラリーマンは午前中欠勤、ということになる。

 ちなみに、死ぬまで体は成長し続けるのも爬虫類の特徴だ。僕のじいちゃんは85歳で死んだけれど、その時の身長は3メートルを超えていた。でも森繁なんてもう4メートル超えてるからね、大したことないんだと思う。

 来月、5月くらいになると、待ちに待っていた季節がやってくる。この季節になると、男も女も、たまらなく解放的な気分になってくる。

 そう、発情期だ。

 6月を過ぎたら女も男も性欲がまったくなくなってしまうから、僕らはここで一年分の恋をする。彼氏、彼女がいるカップルは、この時期、街では見かけることはない。だって、朝から晩までずっと二人だけでいるから。

 僕のように特定の相手がいない連中は、特に4月は、必死になる時期だ。毎日毎日、相手を探して街をさ迷い歩く。少しでも体が大きい奴、強い奴が女の子にはもてるみたいで、街はちょっとした戦場のようになっている。喧嘩やいさかいも絶えない。
 そういうのをかいくぐってかわいい女の子を捕まえられたからって、安心はできない。数ヶ月もすれば、彼女たちは白くて真ん丸い卵を何個も産むのだ。

「この子、みんなあなたと私の大切な子供なんだから、一緒に仲良く育てていこうね!」なんて笑顔で言われたりする。その頃には僕の性欲はもうどこかに行ってしまっていて、正直、なんでこんな女の子と付き合っちゃったのかなあ、なんて後悔してたりもするのだ。

 彼女がちょっと出かけているとき、家でぼんやりと僕たちの卵を温めながら、僕はちょっとだけ妄想してみる。
 もしも僕らが哺乳類だったら、もうちょっと楽しい人生だったんじゃないかなあ、と。そんな妄想で時間をつぶすのは、僕の数少ない趣味のひとつなのだ。


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by AyatoSasaki | 2004-04-02 02:44 | 妄想日記
 人生は箱入りチョコレートに似ている。食べてみないと中身はわからない。……それはともかくドーナッツはプロレスの技に似ている。

「……さぁて、大仁田厚、ザ・グレート・サスケをロープに振った! 出たっ! ウェスタンラリアート! 決まった! サスケ、リングに倒れる! 大仁田、すかさずサスケの後ろをとって、フレンチクルーラーで固めた! サスケこれは痛そうだ、苦痛に顔がゆがむ、極まったか、極まったか? いや、サスケここは器用にかわしてすかさず反撃だ、バタークランチ! サスケ見事な反撃技です。大仁田の髪をつかんで、ココナッツクラッシュです! ここで大仁田流血! ものすごい形相だ! サスケ続いて次の技に移る! 何だ、何が出るのか? おぉっとミックスドポップだー! 大仁田倒れたぁ! サスケなお攻撃の手をゆるめない、うつぶせに倒れた大仁田に馬乗りになって、出たー!キャメルクラッチ! これでギブアップか大仁田、いや、大仁田、メキシコ仕込みのハニーチュロでなんとかかわします! 大仁田すかさずポン・デ・リング! 鮮やかに決まりました! 大仁田、サスケをロープに振る、出た! エンゼルフレンチ! サスケ動けない! ここで大仁田がフォール……1、2、3! カンカンカンカーン! 大仁田勝ちました! 1R1分40秒、ザ・グレート・サスケを鮮やかなエンゼルフレンチで倒しました!……」

 人生は箱入りチョコレートに似ている。……それはともかくドーナッツはプロレスの技に似ている。
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by AyatoSasaki | 2004-03-31 02:55 | 妄想日記