<妄想>『icedayとは何ぞなもし』より無断転載。

先日、荻窪の古本屋で見つけた分厚い本なんですが、面白かったんではしがきだけ全文転載しておきます。
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はしがきにかえて iceday研究の魅力と泥濘

 このたび、天才ブログ作家iceday氏のわが国初の研究書『icedayとは何ぞなもし』を刊行できる運びとなったことは、十余年にわたりiceday研究家を自認してきた編者にとって望外の喜びである。

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 氏の独特の魅力をこの限られた紙数で語り尽くすことはできまい。しかし今日の我々はその魅力的な作品全てを氏のブログ上で(無料で!)読むことができる。
 氏の魅力の荒々しい原型が既に見られると研究者の間での評価も高い処女作品「ウーロン茶」から、氏にとって一つのターニングポイントを迎えた代表作「蹴球的飲会」、ベーコンレタスバーガーにパテが入っていなかった「笑えなくしてみたい。」に至るまでのあらゆる作品が、例えば、現在は礼文島でウニ漁を営むわが旧友、山之内譲治くんにさえも(ウニの殻を剥く手を少し止めてくれさえすれば)(無料で!)読むことができるのである。インターネットなどなかった時代よりiceday研究を続けていた十年前の作業を振り返れば隔世の感がある。なんともはや、いい時代になったものだと、驚嘆を禁じ得ない。

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 icedayブログの魅力の一つは豊富かつ奇怪な人物構成にあると言えよう。博士、猿、助手、マーライオンのデルピエロ海を渡る犬「ねじ」なんか最近出てきた「皆様パタゴニア~」とかいう不快な人、など、多彩な顔ぶれは読む者を飽きさせない。
 特に職能の幅広さとそれに反比例する了見の狭さを持つ女、ダービッツは、氏の生んだキャラクターの中でも群を抜く怪異さである。美容師に始まり、居酒屋店員不動産屋旅行代理店新聞勧誘自動車教習所教官バスガイドブライダルコーディネーター(ここで初めてお客様の性別を知った者多数。)、ゲームソフト屋店員パソコン講師タクシー運転手ブティック店員寿司職人スーパー店員(バックヤード)、警察官と、現在までダービッツの経験した職業は遂に十五を超えた。これは、前述の旧友、山之内譲治君が、七年前に株式会社むささび物産を懲戒解雇されてから現在までの転職回数(十三回。うち正社員四回)に匹敵する。山之内君が七年かけて築き上げたキャリアを数ヶ月で軽々と超えるダービッツ、やはり只者ではないといえよう。

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 iceday研究者の間では、氏の意欲的な創作活動を五つの時代に整理して捉える(Sardine, 2004などによる)ことが定説となってきている。曰く、

1、黎明期=蒟蒻とY君の時代
2、「蹴球的飲会」期
3、「マグロ市の誕生とその発展」期
4、博士期
5、別冊アスキー載っちゃった期

の五時代である。このうち「博士期」の呼称については他にも「ダービッツ期(Salmon, 2002)」「助手期(Whale,Dolphin et al.,1972)」「猿期(Mackerel,1623)」「お客様期(Yamanouchi, 1999)」などの別称があるが本書ではSardine(2004)に従った。

 いずれの時代においても、iceday氏の創作への強い魂はひとときも翳ることはなかったが、中でも特筆すべきは「蹴球的飲会」期以降に生み出された「羅列系」作品群であろう。これにはかるた風のもの(「ジェラートはラムレーズンで決まり。」)、散文詩風のもの(「恐れていたのはトイレットペーパーがきれること。」「あなたが星を探すなら、わたしは電力止めましょう。」など)、ひとことネタを並べて鑑賞するもの(「女と猫は呼ばないときにやってくる」「もう少しで求婚の季節も終わります」)などのいくつかのジャンル分けが可能である。これら作品群が質・量ともに圧倒的な存在感を示したことが、現在のiceday人気につながる原動力になったと言うことができよう。

 また「マグロ市の誕生とその発展」期にブログ名をころころ変えていたという事実にも、ここでは触れておきたい。「つれつれマグロん」「人ツナ”まぐろ”・・・揺れる背びれ」「*なりたいマグロになる*」(現在なら「なりたいマグロ探しの旅」)など他のブログの題名をもじったタイトルが多かった、というかそれが全てだ。氏がこのような度重なる名称改変をした理由について、多くの論文が発表されている(Goldfish, 2002 など)が、現在では、「隣人に同化したくともできないマグロの悲哀を表現していた」というのが定説のようである。

 余談であるが、編者の元には、一九九九年ごろから十数度にわたり、全国のありとあらゆる消印の押された無心の手紙が郵送されてきていた。内容も筆跡も全て同じであったものの、送り主の名だけはなぜか毎回違っており、「山上譲」「山崎謙治」「ジョー内山」など、似通ったものが多かった。編者はその都度、微々たる金額を現金書留で返送してやったものである。
 思えば彼も「隣人に同化したくともできない悲哀」を表現していたのかもしれない。

 ところで山之内君、君はいったい、誰に追われていたんだね?

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 さて、はしがきとして編者に与えられた紙数も間もなく尽きようとしている。

 本書は、現代iceday研究の最前線から、それぞれの分野での最新の研究成果を編纂したものとなっている。より多角的な視野からiceday作品を鑑賞・分析するために、以下の七章(+あとがき)で構成することにした。

第一章 「ポストモダンとしての猿・試論」
第二章 「酩酊とiceday~泥酔者心理学としてのiceday研究」
第三章 「『お客様は女か男か』論争と二人のiceday」
第四章 「マグロ市はどこにあるのか~地誌学的視点から~」
第五章 「右上写真の謎~あれ、ほんとにお前んちの風呂?~」
第六章 「真冬のバフンウニは美味いどー!」
第七章 「iceday~そのアイディアの源泉~」
あとがき 「結婚すると、ふたりで油田を掘ることができる」

 このうち、第一章から第五章までと第七章については編者が担当執筆した。第六章は山之内譲治氏(北海道在住)からの特別寄稿である。いずれの章においても、iceday氏の作品の魅力を真摯に分析した内容となったと自負している。

 読者諸氏におかれては、是非一度、全iceday作品を通読されたい。そのあふれるユーモアと抒情に、時に抱腹絶倒し、時に落涙すること間違いない。その後に本書を再度手にとっていただければ幸甚の極みである。

 最後に私信となるが、山之内君、もう十分君には援助をしてきたはずだ。君の夢はよく分かるが、北九州のニャンニャン喫茶で大失敗した時のことをいま一度思い出してくれ。他のことならともかく、択捉島の油田ビジネスに投資するのはリスクが高すぎる。もう少し冷静になって再考してはくれないだろうか。
 頼むから。
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by AyatoSasaki | 2004-06-08 08:57 | 妄想日記