<詩歌>ゴルゴ。

ゴルゴ13みたいに笑わずにリモコンを撃つ夜のリビング
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 ある時から、たぶん2年ほど前だったと思うが、ふと思い立ち、ある「修行」を始めることにした。

「ゴルゴ全巻読破行」

と僕が個人的に名づけているその荒行は、主に体力のある日の深夜の漫画喫茶で行われている。ルールはシンプルである。

「ゴルゴ13を1巻から最新刊まで読みつづける。流し読みはせず、全てのセリフを丹念に読む。あ、あと、ゴルゴのセリフは全部書き写す。」

 ゴルゴ13ことデューク東郷さんは、ほとんどしゃべらない。デュークのセリフの実に7割以上は三点リーダー(「…」)だ。さすがに三点リーダーだけのセリフは馬鹿馬鹿しくなって途中から書き写すのをやめた。

 20巻を超えたあたりからこの修行の真の苦しみがわかってくる。もう、どの話もだいたいおんなじようなのだ。政治家、金、権力、飛行機、社長、女、ゴルゴ、バキューン!……だいたい今ので皆さんにストーリーを伝えられたような気がする。
 そして笑いは一切ない。これがまた辛いのだ。

 それでも、修行をある程度こなすと、デュークの寡黙さの中に潜む聖なる響きが見えてくるようになる。デュークの「みことば」の宗教的価値について皆さんの共感が得られれば良いのだが。以下、数字は巻数とページ数です。

「おれの乗る便はおれが決める…」(12-178)
「老いて牙が使えなくなった犬は…死ぬべきだ!」(13-243)
「だまってまっすぐ見て歩くのだ…」(15-208)

 選ぶ語彙が時折チャーミングなことがある。海外生活が長くて日本語を忘れているのかもしれない。

「運送屋だよ!!」(1-197)
「これから呪いを解くおまじないをするのだ…」(11-109)
「犬も歩けば…棒にあたる…」(7-28)

 時々なぞめいた「みことば」があるのも見逃せない。こんなの。

「…大アリクイ…」(10-255)
「とんだ動物好きだな…」(9-178)

 伝え聞いたところによると、50巻を過ぎてからのデュークはさらに寡黙になるらしい。残念ではあるが、それでもなお、心に響く「みことば」に期待したいと思う。
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by AyatoSasaki | 2004-05-05 19:31 | あらら短歌