<日常>花見しました2004。

 友人の山さんは人相がとても怖い。

 黒々とした髪はいつでもリーゼント風に固められていて、目は細く、あごと口に髭をはやし、けして太っている訳ではないが威圧的な体格をしている。宇崎竜童からあのくりくりした目を取り外し、代わりにそこらへんのヤンキーから適当に拝借してつけてやれば、それがだいたい山さんである。

 でも、その容姿からは想像できないくらい、山さんはとても優しい人だ。いつも腰が低く、応対も丁寧で、そしてちょっとだけ気が弱い。ついでに言うと酒にも弱い。

 先日、仲間うちで花見があった。僕も、もちろん山さんもやってきて、久しぶりに昼間からビールを飲んだ。4、5年前までは結婚できないのが悩みだった女友達もいつの間にか次々といい相手を見つけて、今は立派にお母さんである。僕も子どもは好きなほうなので、彼女たちの2歳だか3歳だかの息子たちと原っぱを駆け回って遊んだ。晴れた春の午後のささやかな幸せの時間である。

 花見の座で酔っ払う男どもの雰囲気に子どもたちも徐々に警戒感を緩めていくが、それでもただ一人、子どもが常に警戒して止まない人がいた。そう、山さんである。子どもは残酷なほど正直で、表情を変えずにビールを飲み続ける山さんをちらりと見たきり、母親の陰に隠れてしまう。それに気付いて少し落胆する山さん。

「大丈夫。怖くないからね。」と、まるで犬でも指差しているみたく言う母親。それを聞いてまた山さんは悲しげな顔になる。

 そのうちに山さんも酔いが回ってきて、走り回る子どもに突然奇声をあげた。「ぐわぁ!」……子ども、まじびびり。

 でもその後、子どもたちはいつの間にか、「山さんを怖がる遊び」をし始めた。山さんの目の前にそろそろとにじり寄り、目が合ったら一目散に逃げる。そんな遊びだ。「ぐわぁ!」のひとことで、山さんは見た目ほど怖い人じゃない、ということに気付いたのだろう。子どもにからかわれ続ける山さんは、でも、ちょっとだけ、嬉しそうだった。

 子どもは残酷で、正直で、でもものすごく敏感なんだなぁ、という話である。
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by AyatoSasaki | 2004-03-31 18:41